著者の長谷部恭男さんは長年、東京大学で教鞭をとってきた人です(現在は早稲田大学)。
長谷部恭男さんが憲法を体系的に学ぶことができる書籍を発行しました。
タイトルは「憲法講話 24の入門講義」です。
「芦部憲法を学んだけどよくわからなかった」「これから大学で憲法を勉強するんだけど何を読んだらいいの?」というような人のために本書は書かれました。
また、「久しぶりに憲法を振り返りながら、論点を勉強したい」という人にも最適なのが本書です。
目次
長谷部恭男さんってどんな人?
著者の長谷部恭男さんは長年、東京大学で教鞭をとってきた人です。
現在は、早稲田大学に移籍しています。
長谷部恭男さんは、いろいろな意味で注目されてきた人です。
国会で、集団的自衛権を容認する安保法制が議論されていたときのことです。
自民党推薦の参考にとして国会に呼ばれた長谷部恭男さんは、安保法制を「違憲である(疑いが強い)」と述べたのでした。
この意見は自民党だけでなく、国会に激震が走りました。
だって、自民党推薦の参考人が、与党(自民党・公明党)が成立をめざす法案に対して「違憲」とはっきり述べたからです。
この意見について私は「憲法学者として最低限譲ることの出来ない立場を表明した」として拍手をおくりました。
その後は、安保法制が違憲であることを世論に向けて発信することに尽力されました。
サブタイトルは「24の入門講義」ーシンプルな章立て
本書はサブタイトルにあるように、「24の入門講義」から成り立っています。
憲法の基本書のように至ってシンプルな章立てになっています。
「近代立憲主義のの成立」から始まり、「天皇制」「平和主義」から基本的人権へ、そして統治権(国会、裁判所、行政)へと進みます。
ですから、読み方としては、最初から順番に読んでいくのがおすすめです。
しかし、特に興味のあるところから読みススメても全然構いません。
「24の講義」ですから、毎日1講を読んでいけば、1か月弱で読めてしまいます。
最高裁判所の落とし前のつけ方
法律を学ぶには条文だけでなく、具体的な争訟で裁判所がどのような判断をしたのかの学習も必要になります。
最低限の最高裁判例が紹介されていますが、本書は「落とし前のつけ方」についての考察が興味を引きます。
言葉だけだと漢字ばかりで難しいと言うか身体が受け付けませんって方がいると思います。
要するに、法律上の婚姻から生まれた子(嫡出子)とそうでない子(非嫡出子)の法定相続分について、非嫡出子は嫡出子の二分の一と定められていました。
この規定の合憲性(平等違反ではないか)が問題になったのでした。
最高裁は1995年の決定で「合憲」との判断をしています。
しかし、2013年の決定では、異なる結論(違憲)をしました。
この決定は2013年に出されていますが、最高裁の判断では、問題となった相続が開始された時(2001年7月)には「違憲」となっていたと判断したのです。
問題は、2001年から2013年までの間におこなわれた相続についてが問題となるのです。
最高裁は、2001年から2013年までの間におこなわれた相続が覆されるとなると、法的安定性が著しく害されるから、すでに確定した相続については影響を及ぼすものでない、と指摘します。
「落とし前のつけ方」というと構えてしまいますが、最高裁は後処理についてまで考えて決定をするし、本書の考察が興味を引くと私は思いました。
まとめ
憲法を勉強するための書籍は多く発行されています。
ですから、自分にあった書籍を選ぶことが大事です。
でも、中には「立ち読みできない」などの理由で実際に手にとることが出来ないこともありますよね。
本記事が書籍を選ぶ際の参考になればと思います。